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REPORT イベント実施報告

チーム別課題検討:中間講評会

2020年8月6日@zoom

発表者:チーム①(松本様)、チーム②(芝田様)、チーム③(安藤様)
講評者:中井検裕、十代田朗、真野洋介、浅輪貴史、鼎信次郎
モデレーター:坂村圭

チーム① 発表要旨+質疑

【発表要旨】
1)Discussion
・シナリオ1「住まい方・働き方の選択の事由が増える」
・シナリオ2「自由な移動が増える」
・シナリオ3「ボーダーレスな社会」
・シナリオ4「自由な時間の増加による余暇の多様化」

2)Design Principle
・人、人と人との関係があらためて重要になる(人間が人間であることに価値を見出す時代/健康・ウェルビーイング)
・個々の自由な選択を可能にするシステム(多様なコミュニティを支えるプラットフォーム/仮想空間のコミュニケーション/マッチングの仕組み/イノベーションの場)

3)Design Idea
・多様な住まい方・働き方を可能にする都市構造(都心と地方の関係/コンパクト化を促進するインフラ/都心と郊外の新たな関係)
・人が集まることの価値・そのための空間のあり方(都心に集まることの価値・空間のあり方/都心のリノベーション)
・民間と自治体の連携によるインフラの整備・維持(インフラを維持する仕組み/エネルギー・サスティナビリティ/安全・安心)

【質疑】
(浅輪)
・多様性や自由が非常に重要となってきていると感じている。働き場所や居住地の選択肢が増えてきていることや、逆に世代間のギャップ注目することが重要だと感じている。
・多様性といった時に、社会的弱者、高齢者、情報弱者などの方を議論に入れるようにしてほしい。テレワークに関しても、できる業種/できない業種ということを考慮してほしい。

>選択を可能にするインフラをどのように作っていくかが重要だと感じている。

(真野)
・個人スケールに着目している点は大いに共感できる。一方で、個人の意思/組織の考え/政府・自治体の話/社会の倫理観(暗黙のルール)の4つがせめぎ合って(矛盾して)、多様な選択肢があっても多様な選択ができない現実がある。その解決は如何にして達成できるのだろうか。
・これまでのコア(業務核)は一定のスケールや集積が無ければならなかったが、ある意味では空間とのつながりのない(仮想空間でもよい)個人と個人がつながる「ハブ」が生まれ始めている。そのときに、空間のスケール間や都市像はどのようなものになっていくか。これまでの都市論だと近接性や集積が無くならないという言説があったが、人とのつながり方が変わった際に、まちはどのように変わっていくのか。

>集積している必要もなく、集まるコミュニティが近くにあればいいという印象。確かに現実の場でなくてもいい。
>一方で、町田とか柏とかは現実にごちゃごちゃ集積している。近郊のコアで新たな人が流動する場所づくりも同時に行ってほしい。
>コロナ収束後にある程度人の流れも戻るので、これまでのオフィスの集積などが必要なくなることはないと思う。人の流れが戻っていく中で、新たな人のつながりを支援する機能をそれぞれの場に追加できる仕掛けを考えたい。

(十代田)
・これからの都心や郊外の機能をどのように考えているのか。小さい中心が必要な時に、全体の機能の分担などをどのように考えているかを考えてほしい。

チーム② 発表要旨+質疑
【発表要旨】
1)Discussion
・未来予想
・そうしたなかで、未来がどうあってほしいか
・望む未来を実現するために何が(どういう都市が)必要か(切り口)

2)Design Principle
・歳をとっても暮らしやすいまち
・安心、安全、快適なまち
・お金(それに準ずるもの)があつまる仕組みがある
・生きがいを得られる、セレンディピティ―を期待できる
・個性がある個々のまちを、自由に気軽に選択できる

3)Design Idea
・変容する都市イメージ(リアルとバーチャルの狭間にある未来の都市のイメージ)
(コロナ前は、場所と目的や行動と対応していて実際の移動をしていた。コロナ後には、ウェブを用いた行動が行われ移動が減少した。この結果、現実の場や都市に求められる意義・機能が大きく変わっていくのではないか。この上で、リモートだけの弊害なども勘案して新しい都市のイメージを考えていく。)

・未来のアゴラ(人が実際に集まる場、出会いのあり方)
(都市の中には様々な人がいて様々な使い方、感じ方をしている。それぞれの人の背景、属性、視点に沿って場所を組み立てていかなければならない。家族や仕事のつながりに加えて、第三のつながりも作っていくのが良いのでは。)

・パーソナルモビリティー(モビリティ―のパーソナル化・高性能化、暮らし方の変化)
(以前は集まることが良い風潮だったが今は必ずしもそうではない。しかし、人間の欲求の上位に集まる・移動という行為があるように思われる。これまでは移動だけであったモビリティをどのように考えていくか。人間の移動はこれまで移動手段ばかりが考えられてきたが、これからは人間が移動の主となり(行動意欲が重要となり)、それを実現するインフラや空間の使い方が重要となるのでは。)

【質疑】
(鼎)
・パーソナルモビリティーを考える際に、エコの視点も入れてほしい。パーソナルとエコはこれまで対立してきた(非人間な扱いを受けるほどエコなものが多い。エコノミークラスの方がエコ)。

(真野)
・アゴラという用語に込めた意味はどのようなものか。人間が大事になるという意味ではサイアムが「都市のコア」と呼んでいたり、丹下健三は戦後の人々の集まる場所というイメージを持って「コア」という言葉を用いていた。未来のアゴラにはどんな意味やイメージがついてくるのかが気になる。

>人間の発想のもとで自由に使えるイメージ。いまの都市の空間は割と用途が細分化されているので、そこから解放した集まる空間を生み出したい。まだ具体的な空間像はないが、屋外のような屋内のような中間的なところを考えたい。

(十代田)
・個人体験を丁寧に追っているところに好感が持てる。アゴラという祝祭空間にモビリティの話をぶつけて、どういう空間が生まれるかというところに期待している。

チーム③ 発表要旨+質疑
【発表要旨】
1)Discussion
・現状分析
・前提となる2100年の姿(自然・社会環境/まち・都市の環境/人の価値観/経済・産業環境/健康・医療)

2)Design Principle
・開発から共生社会へ
・予防重視から再生能力社会
・Compact & Flexible
・絆
・自由・気まま
・自動化
・感性
・自分能力
・人間再生

3)Design Idea
・今できる技術と新たな技術が必要なものとで分類
・あらゆる人の生活の質を良くするものと限られた人の生活の質を良くするもので分類
・コロナ時代を踏まえた都市の課題を解決するアイデア(ニューカッスルの交通空間リノベーション/英国のコロナ時代のシェアスペース/ロンドンの自転車戦略)

【質疑】
(十代田)
・網羅的に整理されていて非常に分かりやすかった。今後のことを考えるにあたっては、いくつかのコンセプト同士は対立することもあるので取捨選択も必要となってくる。

>フレキシビリティがキーワードになるかもしれない。

(浅輪)
・人のつながり、レジリエンスを強調していただいたことが大変良かった。このうえで、共生社会といった時に、従来のコミュニティの単位なのか、これまでのコミュニティ単位を超えたものか、ということを議論してほしい。共生社会で想定している新しいコミュニティの単位は、従来の血縁や地縁の枠組みを超えるものかなどを話し合ってみては。

(鼎)
・居住地をある種では制限するコンパクトシティの話があったが、どのように人を動かすかが現在の法制度の下では難しい。どのように乗り越えていくかも議論してほしい。

全体講評(中井検裕)
・とても緻密に議論を積み重ねている印象を受けた。コロナ禍では、移動や集まることなどの、人間の本質的な欲求が制限されている。このようなことを考えて都市のこれからを考えることは重要。
・人生100年時代に、どのような都市になっててほしいか、どういう風に時間を過ごしたいか、という視点も忘れないでほしい。将来予測だけでなく、こうなってほしいという希望のようなものを提案に織り込み、そのためにはこんなものが必要という話もしてほしい。
・子供のように毎日にときめきがあると時間の経過を長く感じることができる。ときめきを都市の中にどういう風につくっていくかが、人間にとっては重要なのかもしれない。「時間」ということも提案に織り込んでくださり、ワクワクする発表にしてくださると嬉しい。

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