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REPORT イベント実施報告

シンポジウム チーム別課題検討 最終報告

2020年10月29日シンポジウム

レポート2020年10月29日 シンポジウム内
「チーム別課題検討 最終報告」
発表者:チーム①(松本様)、チーム②(芝田様)、チーム③(安藤様)

●チーム①(松本様) 発表要旨
人生100年時代に自分たちの関わっているフィールドがどのように変わっていくかを議論してきた。これに関しての4つのシナリオを発表する。
 一つ目のシナリオが「働き方・住まい方の選択の自由が増える」というものである。AI・ICTの技術の進展による働き方の変化、価値観の多様化が影響して、住まい方や働き方が変化することが予想される。住まいはnLDKからnLWDKに変化し、都市構造は同心円状から分散型の都心(小さなコアでの自然豊かな生活)へと変化していく。
 人の住まい方に関しては、人生のマルチステージ化が進展し、その自由度が広がっていくだろう。教育や学び方も多様化し、どこでも最先端の学び方が可能となる。そして、都市に住めばこそ享受できる文化を味わいながら、緑豊かで涼しい山の家と温暖の気持ちのいい海辺の家の三拠点による豊かな生活も可能となる。それを実現するものが、これからの都市インフラではないだろうか。
 二つ目のシナリオが、「自由な移動が増える」というものである。この議論の発端は、そもそも受け身的な移動自体が不要になるのではということであった。これから移動手段自体が進歩することで、変化に富んだ都市の魅力が増加していくことが予想される。その際に、リアルとバーチャルの移動体験のすみわけを考えることや、移動自体の目的化ということを再考することが必要となるだろう。
三つ目のシナリオが、「自由な時間の増加による都心の役割の変化」というものである。自由な移動が可能になると、都心に来る必要がなくなる。その際に都心は、あえてリアルでなければ体験できないことを行う場、エンターテイメント・交流の場に変わっていくだろう。
 四つ目のシナリオが、「ボーダレスな社会とアイデンティティの向上」というものである。言葉のバリアが技術的に解決されて、好きな時に好きな場所に住めるようになる。そして、場所が働く場所から解放された場合には、本当に魅力のある地方も、新たなまちづくりをしっかり行うことでまちのブランド化が行えると考えられる。
 このようなシナリオから見出された、人生100年時代に向けて重要なことは、「人間が人間であることに価値を見出せること」「ウェルビーイングを維持」「多様なコミュニティを支えるプラットフォーム」「仮想空間のコミュニケーション」などである。デジタル化の中でリアルに会うことや自然体験の価値が高まる。そして、単純に健康であるだけでなく、幸福という観点からインフラを考える必要が生じてくる。また、個々の自由を可能にしながらマッチングできるインフラや、仮想空間のメリットを活かしながら匿名性等の問題を解決していくことが必要となる。このようなシナリオを実現するための、都市OSともいうべきインフラが求められていくだろう。

発表資料チーム1 20201029人生第1グループ

●チーム②(芝田様) 発表要旨
 未来予想的なものよりも、ありたい将来というものを中心に考えてきた。コロナの前後で議論は大きく変化しており、コロナ後にはこれからどうありたいかを主観的に考えられるようになった。このうえで、ありたい未来は、世代によって大きく異なるものだということに注意しながら議論を進めてきた。
 まず、コロナによる急激な社会変化からの考察を行った。これまでリアル中心であった社会は、コロナ後にバーチャル中心になってきた。現在は、それが終わりつつあり、リアルとバーチャルが共存する、選択と分散の時代になっている。バーチャル技術はこれからますます進化していくことが予想されるが、バーチャルに偏重することで、人間の感覚が退化していくことや、分断や格差の発生が危惧される。
 では、どのようにしてリアルとバーチャルの良好な関係を構築していくべきだろうか。コロナを経験して、バーチャルの有効性と課題というものが十分に実感できた。バーチャルは、きっかけや場所を選ばずに交流を実現するが、それは五感にふれるような体験ではない。今後しばらくは、バーチャルはリアルを補完するようなツールとして捉えていくことが重要ではないだろうか。例えば、リアルへの導入として手軽なバーチャル体験を利用して行くこと等が考えられる。これからバーチャルが一層進化していけば、パラリアルな世界の実現も考えられるが、このような世界のあり方に関してはより一層の議論が必要となる。
 リアルな場への望み、未来のアゴラに期待したいものはどのようなものか。アゴラとは、そもそもは古代ギリシャの人が集まる公共の場所であるが、未来のアゴラ空間は選択と分散の時代に人を結びつける要の場となると考えている。このアゴラは、多様性を受け入れる社会のプラットフォーム、心理的な安心とワクワクを感じさせる場、多様な可能性を残した場である。アゴラは土地の性質や歴史に応じて個性を持つ。バーチャルの中に形成される場も一つのアゴラになるかもしれない。人々の心身の健康を保つうえでも、アゴラはますます重要なものになっていくだろう。
 モビリティは、個と社会を結びつける新しいインフラとして期待できるものである。モビリティとは、個人の移動欲求を実現するものであり、マストラのインフラもパーソナルインフラに変わるかもしれないし、移動しながら生活を行う場に変わるかもしれない。移動すること自体が目的化すると、モビリティは、人をリアルな場やバーチャルな場、さらには社会へと結び付けるインフラとして、その重要性がますますあがっていくだろう。
 こうして出来上がる人生100年時代のまちがどのようになってほしいかを、ケビンリンチの都市のイメージを参考に検証してみた。現在、ケビンリンチが提唱した都市をイメージするための5つの構成要素の重要性は薄れていっている。それによって、都市の刺激や体感、都市認識は衰退している。技術の進歩で寿命はのびていくと予想されているが、体力面、精神面での健康は努力しなければ得られない。人生100年時代をよりよく生きるためには、五感にふれる都市が必要となるのではないだろうか。パスであれば、歩きたくなるしつらえが、エッジであれば魅力的な親水空間や都市と農村のより親密な関係が必要となる。ノードであれば、新たな出会いや気づきをもたらす交点が、ディストリクトであれば、独自性の豊かな地域による多極集中型の都市が、ランドマークとしては、形態的象徴だけではなく精神的に拠り所となるような場所が必要となるだろう。
 コロナの経験を経て、感染症対策の根本の普遍性と、コミュニケーションや五感を刺激する大切さを再認識した。都市やインフラには、人々の健康の基礎であり続けることが今後も求められる。科学技術の進歩を取り入れながらも、都市づくりに関わるものとして、都市のイメージの重要性を再認識し、五感を刺激する都市づくりを行っていくことが人生100年時代を考えていく際に求められると感じた。

発表資料チーム2■東工大産学T2シート(超最終)
 
●チーム③(安藤様) 発表要旨
 2100年の社会の未来を現代のトレンドから予想した。特徴的なものとしては、自然回帰、リボーン社会が起こることが挙げられる。リボーンとは、広い意味での人間性の復活をあらわすことである。
 都市と社会のメガトレンドとして、計画的でなくてよりフレキシブルになること、予防的でなくて再生的になることを予想した。予防にも限界があり、計画的に実行することにも限界がある。不確実な未来に想定外のことが起こった際にもフレキシブルに対応して、自力で再生できるしなやかで順応型の高い仕組みが求められていくだろう。
 2100年の社会と都市のキーワードは、Nature(自然回帰)、AI(人工知能、Society5.0、デジタルツイン)、Sensitive(感性社会、感受性)、Connect(つながる、絆)、Regeneration(再生可能、自然・コミュニティ・歴史の再生)である。
 ここから、具体的にどのような都市構造が出てくるかということを考えた。これまでは都心に大きな機能が集まっていて、郊外には従属的な機能があった。その結果、全ての人が都心に向かって動いていて、社会にゆがみが出ていた。一方で、2100年になると都心と郊外がよりフラットになることが予想される。郊外にいろいろな機能やポテンシャルが出てきて都心と郊外が対等になり、お互いに行き来するような緩やかな関係が生まれてくる。その結果、ストレスの多い通勤が少なくなり、より分散した緩やかな移動が増えるだろう。このなかで議論となったのが、自然治癒できる社会とはどのようなモノかということである。このような社会では、これまでのようなハードのインフラで防災するのではなく、人間がまちを支えて再生能力を上げていくことが求められる。このような意味でも、郊外には人も敷地も十分にありポテンシャルはとても高いと思われる。
 東京と地方の関係も同じ文脈で考えてみると、東京一極集中から、東京と地方がより対等なものに変わっていくことが予想される。地方にも、郊外と同様に人生100年時代のフレキシブルで再生能力の高い社会をつくるためのポテンシャルが高いと考えている。

発表資料チーム3 第3班発表資料Final

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